自閉症、発達障害の育児をしていると、親の働き方についても考えさせられる。発達障害に限らず、子どもや家族に障害があり常に世話や見守りが必要、特に自分がそのメインパーソンの場合には働きたくとも「働く」ことは簡単ではない。
そんな目が離せない、現在13歳のお嬢も1人で留守番はさせられない。
そんなお嬢を連れて出社した。
子連れ出勤について
託児所が併設されていない場合の子連れ出勤については賛否両論があると思う。
わたしの場合、子連れ出勤が可能だと仕事を休まずに勤務できることはありがたいが、お嬢が周りの同僚にご迷惑をおかけしたら、、という緊張の方が大きかった。
子連れ出勤をする場合、わたしだけではなく周りの理解も必要。同僚は職場にスタッフの子どもがいることで気が散らないか、快く思ってない場合もあるのでは、など。
子連れ出勤の際のお嬢との約束
遠足気分のお嬢を会社に連れて行くにあたり、わたしはお嬢といくつかの「約束」をした。お嬢は自閉症なので、興奮状態や気が乗らなくなれば、約束?何それ?おいしいの?となることもあることはわかっている。また、約束したところで、ワーキングメモリが弱いため忘れる。それでも、わたしは伝えるのだ。しっかりとわたしの話を聞いてもらえる体制を用意して、大切な話をするからよく聞いてほしい、と伝える。
・会社にあるものには触らない
・出社した同僚には必ず「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」と挨拶をする
・大きな声を出さない
・用意された席に座って待つ
お嬢はわたしの目の届く近い場所に座るので、これらの約束は、たまにリマインドもする。
お嬢との出社
7歳のお嬢と出社
最初にお嬢を連れて出社したのは、お嬢が7歳の時。わたしは会社に赴いて勤務しなければならず、iPadを持ってお嬢と出社。
いつまで持つかと思っていたが、当時、夜勤を終えた夫が、わたしの職場まで迎えにきてくれて、夫がお嬢を連れて帰っていった。
お嬢の滞在時間、約1時間。物珍しさにキョロキョロしているうちに、なんとか時間が過ぎた。
夫よ、グッジョブ。
10歳頃のお嬢と出社
正確な年齢を覚えていないのがお恥ずかしいが、おそらくお嬢が9、10歳頃、再度お嬢と出社する機会があった。
この時は、前もってわかっていたので上司に報告。
「預け先がないが、お嬢を連れて出社します。落ち着き等がなくなってきたら、お昼くらいには帰宅するかもしれません。」という内容を伝えた。
わたしの職種は事務なので、在宅で職務を進めることもできるのだが、やはりどうしても会社に赴かなければいかない時もある。ただ、1日中会社にいなくとも、お嬢と出社する際は半日だけ、など調整させてもらうことも交渉した。
その際に、時間を融通してもらい、時短にしたとしても仕事内容や量は変わらない。代わりは基本的にはいないので、とにかく自分の仕事はしっかりとやる必要があるため、仕事を持ち帰ることもある。
他のスタッフが出社すると同時に、お嬢もそわそわし出す。優しいスタッフはお嬢を構ってくれるので、自閉症のお嬢は嬉しさで興奮する、、、。
こうして、2度目の子連れ出社時は、お昼過ぎに退散。
お嬢の滞在時間、約3時間。上出来だ。
13歳のお嬢と出社
そして、迎えたお嬢との出社、第3弾、セカンダリー生のお嬢との出社は大量の映画がはいったiPadとともに挑んだ。
お嬢はトイレの介助(トイレ恐怖症のため初めて使う公共のトイレを使うのに時間がかかる)やちょっとした助けが必要な時を除いては、比較的おとなしく過ごすことができた。宿題をし、本を近くに置き興味があれば眺めてもらい、その後は映画を観て過ごしたが飽きそうになる前に、お昼ご飯の時間にしたり、だましだまし夕方までの滞在ができた。
お嬢の滞在時間、約7時間。感動ものの上出来。ありがとう、お嬢。
こんな日が来るとは、と感慨深く感動し、帰りにお嬢とピザを買って帰った。今回たまたまだったかもしれないが、一度でもこんなに長くおとなしめに待っていてくれたのは大感謝。
13歳の壁
12歳まではお嬢の学校が休みの際には、ホリデーキャンプを利用してきた。学期中には、ブレイクファーストクラブやアフタースクールクラブ(日本で言う学童のようなもの)を利用していた。
しかし、お嬢も13歳、イギリスのセカンダリースクールに入ると、学童的なものは、、ない。ホリデーキャンプも12歳までということで、13歳のお嬢は預かってもらえない。
13歳の壁を感じた。
通常、プライマリー(日本で言う小学生くらい)の間は預け先があるが、セカンダリーになると放課後のクラブも他の普通級のティーンの生徒たちとルールを持って活動したり、コミュニケーションの面でもお嬢にはむずかしい。したがって、自閉症のお嬢には適さない。
預け先が、、ない。
年齢により預け先がなくなる時点で働けないと思っていた
もともと、お嬢が自閉症であることは、会社の面接時に伝えてある。また、私が今の会社に勤め出したのはお嬢が5歳の頃。お嬢が小さい時は学校のイベントや病気等で休まなければいけないことも伝えた上で、今の会社では働かせていただいている。
わたしの勤務時間は基本「お嬢が学校に行っている時間」だ。お嬢のクラブの状況で勤務時間の変動はあったが、ありがたいことにお嬢は学校にも行き、クラブでも預かってもらえたので働くことができた。ただ、プライマリースクールの頃はそれで良いと思ったが、わたしの頭の中では、クラブがなくなるセカンダリースクール生になる頃には、同じ内容の仕事をすることはむずかしいと考えていた。
ぼんやりと、働けるのはプライマリーまでかなぁ、なんてお嬢が幼い時から思っていた。
コロナ禍で働き方が変わった
コロナ禍で多くの人の働き方が変わったのではないだろうか。
わたしもコロナ禍をきっかけに在宅での勤務をすることになり、お嬢も学校に行けなかったので、お嬢のお世話をしながらの勤務はそれはそれは大変ではあったものの、自宅でも働ける、ということがわかった。ただ、生活動作が苦手なお嬢とずっと一緒に過ごしながらの仕事はむずかしいので、食事以外の活動は放置になってしまい精神的にこたえた、、。
周りの理解が何より大きい
上司こそ定時で帰りませんか
これは、わたしの持論だが、上に立つ人ほど定時で帰るべきだ、と思う。
わたしの職場や欧米の会社では、そんなこともないのかもしれないが、もしかすると(もしかしなくても)多くの会社で上司がまだ仕事をしているから、帰りにくい、、なんていう無言の圧はあるのではないか。
わたしの仕事は、上司の勤務時間に関わらず、与えられた自分の仕事を期限内にこなす。もちろん、残業になることもあれば、コロナ禍を経て自宅に仕事を持ち帰ることもある。責任は各自に大きくのし掛かるがフレキシブルではあると思う。
最近では、多くの仕事が会社以外の場所からもできることが増えてきた。
今後はますます、「上に立つ人ほど定時で帰る」上司の姿をみることで職場への意識、働き方への意識、全体の働きやすい会社に繋がるのではないか、と感じる。欧米では、仕事ができない人ほど残業する、、なんて言われることも、、。
もちろん、緊急を要する時の残業などは別。しかし、定時で帰れないことが常習しているのであれば、それは仕事の振られ方がおかしいと思うべきでは、とわたしは思う。(持論です)
コミュニケーションのとりやすい環境がある職場
わたしの上司は、フレキシブルに「仕事の中抜け」等もしていた。
わたしが慣れた頃には、わたしも、その時間でないといけない用ができた際には、「中抜け」、「遅刻」、「早退」をした。むしろ上司が勧めてくれたことが大きかった。たとえば、医者に行く、家の内見に行く、など、どうしても平日の日中にしかできない用がある際には、快く行かせてくれた。
ただし、当たり前だが仕事はしっかりとやる、もちろん繁忙期や緊急な案件や締切がある場合には控える。
わたしは、約1週間前に勤務できない時間がある場合には、相談をして了解を得ている。これは、一緒に働いている人とお互いさまで、たとえ急な用件が入り前もって伝えることができなかった場合も、とにかくは「伝える」。
無理な時には、「無理」と伝える
帰宅時に何か頼まれ事をされたとしよう、2、3分で済む用だ。しかし、この2、3分で1本バスと逃せば、お嬢のお迎えに間に合わない、そんな時は、今は無理、であることを伝えて、都合がつき次第電話をしている。
これってなかなかむずかしくないだろうか。
数分で済むことでも、無理、と伝える、だって、お嬢を待たせるわけにはいかないから。
周りは大体理解してくれる、いや、理解してくれない場合や人も世の中にはいるかもしれない、でも、伝える。
最初は、仕方がないとはいえ気が引けた。わたしはお嬢の療育や検診、学校とのミーティング等で席を外すことが多いが、普段からコミュニケーションをとって、相談するようにしている。
みなそれぞれ、事情がある、伝えなければ伝わらないことって多くないだろうか。
もちろん、わがままになってはいけない。
伝えることはとても勇気がいるが大事だ。
子連れ出勤につづけ
わたしが子連れ出勤に挑戦したのは、わたしの上司がお子さんを連れて出社されていたことがあるからだ。
やはり小学生低学年から、上司のお子さんは学校が休みの際に会社に来ていた。
うちのお嬢とは違い、おとなしいので、まるでいることを忘れるほどの静かさだったが、、。
そんな上司のお子様ももう中学生、1人で留守番や登下校もできるので、すっかり会社に来ることも減ってしまったが、そんな他所のお子様の成長も感慨深い。
ただ、わたしの場合、お嬢を会社に連れていこう、とはこれまでは思わなかった。
お嬢のゆっくりでも成長している様子と、わたしと上司や同僚とのコミュニケーションや信頼関係にともない、連れていってみよう、という気持ちになった。
先に誰かがやっていることで、「わたしも今回は緊急事態、連れていこう!」と思えた。
自閉症育児と仕事の両立
子どもに障害があり、誰かが必ずみていなければならない。そのメインパーソンであれば、なおさら仕事と育児の両立は簡単ではない。
終わらない育児
わたしは、そう思った。子どもに障害があると育児に終わりがない、通常は子どもの成長とともに手が離れていき、フルタイムで働くことができたりするが、それが叶わない。
わたしはお嬢が生まれてから、働き方も職種も変えたし、今後もどうなるのかわからないが、社会全体が子育てをしながら、働きたい人が働ける環境になることを望んでいる。
働けるのはプライマリーまでと思っていたわたしが、現在もなんとか外で働けている。
まだまだ未来は未知数。
子連れ出勤については、まだまだ課題も多い。今回は、わたしの場合の子連れ出勤の記録だが、わたしはお嬢が幼かった頃に想像した未来よりポジティブなものになっている。
もちろん、気まづい場面もあったし、恥ずかしく感じてしまった振る舞いもある、が挑戦してよかった。あとには、そう思えた。
お嬢が会社に来た全ての人、ウォーターサーバーの交換業者の人が入ってきても、頑張って「約束」した「挨拶」は守れていたことが、思い出すたびに微笑ましい。感謝。
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